パッと見、男性用? と思ってしまうほどカッコいい長財布。実はオーダーされたのは女性のお客様。以前、ご主人がスマホケースを作られて、それを見た奥様が、お財布が欲しいといってお二人で工房にお見えになりました。
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おしゃれでカッコいい長財布を作るための打ち合わせ
奥様の目に留まったのは、厚めの黒のヌメ革に模様とコンチョをあしらった、男性向きの長財布。
カッコいい!と気に入られたのですが、さすがに重さも結構ありますし、機能的にも買い物の機会の多い女性には、ちょっと使いにくいのではないかと思って、その長財布を基調に、女性でも使いやすくて、しかもおしゃれでカッコいい財布にアレンジしましょうということになりました。
デザインと仕様を決める
一番気に入られたのが、外側にほどこした模様でしたので、それを入れることは決定。模様の形は、こちらを参考にしました。
見本の財布は、革自体が厚く、男性をターゲットにした作品なので札入れのマチが狭く、女性には使いずらいのではないかと考え、中を見やすく、出し入れもスムーズにできるように、ラウンドファスナータイプにしました。
カード入れも、両側に6枚ずつ計12枚収納できるようにして、中央に小銭入れのスペースを配置しました。小銭入れは、ファスナーを付けず、外側のファスナーを開くだけで中が一覧できるようにしています。
高さを調節して、ファスナーとの隙間を最小限にし、小銭が飛び出ないように工夫しました。
革と糸の色を決める
革は、厚さ1.5㎜の柔らかい明るめの赤をチョイス。外側にあしらう模様は黒で、ステッチは白に決定。想像するだけでもカッコいい!おしゃれ! 作る側の我々もワクワクしてきました。
どんな長財布に仕上がるか、お客様がどんな反応をされるか楽しみです。
製作工程
まずは、寸法に合わせてそれぞれのパーツをカットし、内側の革に、カード入れ、小銭入れ、マチを縫い付けていきます。外側のデザインとインパクトを際立たせるために、中はシンプルに革と同色の赤の糸で縫いました。内側のパーツが完成です。
一番工夫したのが外側にあしらう模様です。カッコよくて、女性らしさも感じられるようにと、何度も描き直しをしながら完成させた下描きを、革に描き写してカットしていきます。
もちろんデザインを描くのも、革を型通りにカットしていくのも手作業です。職人のセンスと拘りが、細かいところにもちりばめられています。出来上がった時の、模様の見え方を、どれくらいにするかが悩んだところでもあります。
次に、切り抜いた模様を外側の革の中央に張り付けて、穴あけをします。細かいカーブや切込みが多いので、穴あけも細心の注意を払いながら、丁寧に進めていきます。あとは、外側のパーツと内側のパーツに、ファスナーを挟んで縫っていくと完成です。
見た目にもおしゃれで、カッコよくて、機能的にもシンプルで使いやすい、ユニセックスな長財布が完成しました。
製作して思ったこと
革が柔らかくて、厚みがそんなにないので、女性の手にもフィットしますし、男性が持ってもカッコよく決まります。
今回施した模様は、これまでも人気ではありましたが、男性用にしか使ったことがなくて、自分たちも無意識に男性向けのものだと思い込んでいました。なので、女性のお客様からリクエストいただいた時は、「えっ?これ入れていいの?!」と、一瞬思いました。
でも、模様の形や出し方、素材を変えれば性別関係なく使ってもらうことができるんだということが、今回のオーダーで改めてわかりました。
お客様のアイデアや新鮮な発想は、いつも我々に気づきをもたらしてくれます。人との何気ない会話の中にも、求められているニーズや、デザインのヒントがたくさんあります。
今回もそれが発揮されて、また一つ自信作を作ることができました。ありがとうございました。