オーダーメイドのレザービジネスバッグ しなやかで使い勝手抜群の一点もの

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ビジネスバッグのご注文

伊万里在住のお客様からご注文いただいたビジネスバッグ。

スマホの画面を見せられて、「こんな感じの!」「色はグリーンで、持ち手はピンクがいいな!」「サイズは横38㎝ 縦33㎝ マチが9㎝」と非常にザックリとしたオーダー内容。

極めつけは、お客様がデザインされたゴリラの缶バッジを、革のワッペンに再現して付けてくれと。

一瞬、うっ!と考えたものの、持ち前のチャレンジ精神が湧き上がって、「わかりました。やってみましょう!」とお引き受けいたしました。

オリジナルビジネスバッグの製作過程

デザインと素材選び

バッグの仕様

まずはデザインを考えました。見せていただいた写真で大まかなイメージはできていたので、お客様のご要望をひとつずつ入れ込みながら、両開きのファスナー、前面にファスナー付のポケット、内側にスマホサイズのポケット、持ち手の付け方を決めました。

革を決める

デザインを決めたら、バッグ本体の革を何にするかを考えました。

ビジネスバッグのご注文ではありますが、普段スーツを着てお仕事をされるお客様ではないので、カジュアルなシーンにも使えるような色と、柔らかめの革を使うことは決定。

容量もタップリあるバッグに仕上げるのに適していて、尚且つ製作上、縫い合わせてからひっくり返すことができる革ということを考慮して、厚さ1.5~1.7㎜の柔らかい発色の良いグリーンの革を選択しました。

持ち手には、同じ種類の明るめのオレンジの革を選びました。

最初、ご注文いただいた時は「持ち手はピンクで派手にして」と言われたのですが、グリーンにはオレンジの方が合うかと思いますし、より派手な感じになりますよとご提案し、「じゃあオレンジで!」ということになりました。

いい具合の派手な感じのビジネスバッグができそうな予感がします。

苦心したのは裏地をどうするかということ。当社の拘りとして、傷みやすいという理由から布の裏地は付けません。

基本的に裏は付けないのですが、どうしても必要な場合は薄くて軽い革を選ぶようにしています。

今回はサイズも大きめで、自立できて、外にファスナーを付けたポケットがあるので裏地は不可欠です。

本体が柔らかめのしなやかな革なので、その良さを損なわないようにするために、今回は豚革のスウェードを使用することにしました。

ステッチの色を決める

派手な仕上がりをご希望でしたが、糸はあえて目立たせず同色にすることにしました。

その方が持ち手のオレンジがより際立って、派手さの中にもスッキリとした雰囲気があってよりインパクトのあるバッグになると思ったからです。なので、グリーンの革はグリーンの糸で、オレンジの革はオレンジの糸で縫いました。

製作

工程①パーツを裁断する

まずはそれぞれのパーツをカットします。縫い代が必要なパーツは出来上がりのサイズより1㎝大きめにカット。マチの部分は長さを調節できるように長めにしておきます。

裏地は仕上がった時にダブつきがないよう、若干小さめにカットします。持ち手は、握った時のフィット感を考えて中に入れる芯材を選び、その大きさに合わせてカットします。

工程②ファスナーをつける

最初にするのはファスナーの取り付け。本体のポケット用のファスナーは、見た目のバランスと使い勝手を考慮して位置と幅を決め、1㎝×17㎝の長方形を切り抜く。

表にファスナーを張り付けて、それが隠れるサイズの補強の革を重ね、あらかじめ作成しておいたポケット部を裏に張って一緒に縫いつけます。

普通は裏にファスナーを張り付けて縫うのですが、今回は裏もきれいにスッキリと仕上げると同時にデザインとしてもおしゃれになるように、あえて表に補強の当て革を張り付けまし

次にマチの開閉部のファスナー取り付けです。出し入れがしやすいように、両開きのファスナーを長めにつけました。マチ部の中央に1.4㎝×46㎝の長方形を切り抜き、裏側にファスナーを張り付けて補強の当て革を縫いつけました。

 工程③持ち手の継手をつける

次に、本体に持ち手を付けるための金具の継手部分を縫いつけます。持ち手は本体に直接縫いつけるのではなく、稼動しやすいようにして、本体に無理がかかって傷めることがないように金具をかませて取り付けました。

持ち手の芯材には直径8㎜の塩ビ製のパイプを使いました。丈夫で程よい柔軟性があるので、しっかりとした持ち手を作るのにちょうどよい素材です。持ち手用の革の長さに合わせてカットし、革に張り付けて縫い合わせます。

工程④内ポケットをつける

次に、小物が入るくらいの内側のポケットを、裏地の革に縫いつけます。これで組み立て前の下準備が完了です。これからそれぞれのパーツを縫い合わせます。

工程⑤各パーツを縫い合わせる

まず、本体に裏地を縫いつけ、その後中表にマチを縫い合わせます。底の部分を縫い合わせた後本体をひっくり返し、底部分に補強の為のプラスチック板を張ってその上に革を張り付けます。最後に持ち手を本体の金具に縫い付けたら完成です。

 ワッペンの製作

今回の製作の最大の難関は、ワッペンの製作です。見本にいただいた缶バッジは、直径2.4㎝。それを4.5㎝のワッペンに忠実に再現する手段をどうするか悩みました。

色々と考えた結果、カービングでやってみようという結論にいきあたりました。

これまで、カービングにはあまり興味がなく、ほとんど手をつけていませんでした。しかし、サイズ的にも他の技法で作るのは困難であるため、この機会にカービングを学んで習得しようと一念発起したわけです。

幸い、以前に知人から譲り受けた道具があり、あらためて出してみたところ、殆ど買い足す必要がないくらい一式揃っていて、あとは自分の決意とやる気があればいつでもスタートできる状態でした。

集中的に、本を見ながら試行錯誤して、何とか納得のいくワッペンを作ることができました。

しかも、縮尺はコピーの拡大ではなく、目視で手描きという大変アナログな方法で作り上げたのですが、なかなかのクオリティだと自負しております。

完成後、周囲から「写メ撮ってコピーすればよかったのに」とご指摘を受けたのはいうまでもありません。が、何しろアナログ世代なもので。ただ、次回からは文明の利器を活用しようと思いました。

出来上がったワッペンは、「製作工程⑤各パーツを縫い合わせる」の、本体に裏地を縫い付ける前に表地に縫い付けました。

製作してみての感想

ビジネスバッグを製作するのも、カービングを施すのも、初めてづくしの今回のオーダーでしたが、これまで培った経験と技術を駆使して、新しい事にも挑戦して、これまでよりも更に製作範囲が広まって、お客様に提供できる仕事が広がったと感じています。

たいへんザックリとしたご依頼で、デザインや素材などはほぼお任せでしたので、自分としては納得のいく仕上がりでしたが、本当にお客様が喜んでくださるのか、お渡しするまで不安でいっぱいでした。

なので、一目見た瞬間に「かっこいい!」という言葉と満面の笑顔をいただいた時は、ほっとすると同時に嬉しくなり、自分の職人としての自信にもつながりました。

お客様がお喜びになり、満足していただけたことが職人にとってはこの上ない喜びです。

~一針一針 心を込めて~ これからもお客様の夢を形にするお手伝いをさせていただけるよう頑張っていきます。

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