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しまいこんだままの革製品はありませんか?
若いころに手に入れて、ずっとしまい込んだまま、永らく使っていなかったショルダーバッグ。引っ張り出して、改めて見てみると、重くてデザインも古い感じ。やはり使えないな・・・と、またそのまましまい込む。
お値段もそこそこしたし、何より気に入って買った物だから、そうそう思い切って手放せるものでもない。しかも、大切に使いすぎて出番が少なかったため、傷みもほとんどない。出してはしまい込み、出してはしまい込みを何度繰り返したことか。
私だけに限らず、こんな経験した方も多いのではないでしょうか?今回リメイクのご注文をいただいたお客様も、そんなお一人でした。
重くて使えないバッグを何かにリメイクしたい
熊本県在住のK様から、「ネットで見たんですけど。」とお電話をいただいたのは、昨年11月でした。
数十年前にお母様が買ってくださったショルダーバッグですが、大きくて、重くて、デザインも型落ちなのでそのままでは使えない。でも、傷みもなくて処分するのはもったいないので、何か他の物に作り変えることはできませんか?というお問合せでした。
リメイクできるかできないか、できるとしたら何が作れるのかといったことは、現物を見ないとはっきりとお応えすることができないので、とりあえず画像を送っていただきました。
無地のバケツ型でファスナーのついたシンプルなショルダーバッグは、おっしゃる通り目立った傷もなく、大きさもそこそこあるのでリメイクはできますよとお返事いたしました。
遠方にお住まいでしたので、現物を宅配で送っていただき、到着してからLINEで打ち合わせをしましょうということになりました。
ラインを使ってしっかりと打ち合わせをする
これまで、リメイク自体はいくつも手掛けてきましたが、すべて直接、工房やイベント会場に持ち込んでいただき、対面での打ち合わせをして製作をしました。
ですから、細かいところまでご説明したうえでお客様にもご了承いただき、安心して製作に入ることが出来ました。
しかし今回は、初のネットを利用しての打ち合わせとなりますので、できるだけお客様にわかりやすく、丁寧に、安心してお任せいただけるような打合せを心掛け、じっくりと時間をかけて一つずつ決めていきました。
デザインや色を、サンプル写真を送って見てもらう
まずはお客様が何をお作りになりたいのかをお尋ねしたところ、ご希望は長財布ということでした。革がかなり厚いので、外側だけバッグの革を使い、内側には薄い革を使うことでOK
次に、内側に使う薄い革の色を決めます。バッグの色は、深みのある暗めのグリーンでしたので、落ち着いた感じがいいか、少し明るめにしたがいいか。相性の良い茶系の革を、グリーンの革と並べて写真を撮り、2パターンか見ていただき、こげ茶色をチョイスしました。
色を決めた流れで、ファスナーの布部分の色と、ステッチの色を決めていきます。グリーンの革とファスナーと糸を合わせた感じを、これも何パターンか写真に撮って送り、見ていただきました。
あとは、お客様の想像力と直感とお好み次第です。そのうえで、こげ茶色のファスナーにグリーンの糸を選択。全体的にまとまりのある、落ち着いた感じになりそうです。
次は、一番重要な内側のデザインです。カードは何枚収納できたがいいのか。小銭入れはどの位置につけ、ファスナーを付けるのか、付けないのか。そういった細かい部分を、イラストや写真を使って、しっかりと打ち合わせしていきました。
打合せで心がけていること
一つ一つ決めていくうえで、一番大切なことはお客様のご要望です。ですから、どんなに小さなことでも遠慮なくお伝えいただき、そこを尊重したご提案をして選択、決定していただく。これは、ネット、対面にかかわらず、打ち合わせでは常に心がけていることです。
お互いに、「こう言っておけばよかった」「この方法もあったのに」と後悔し、残念な結果になることだけはあってはならないと思うからです。やり直しのきかないリメイクではなおさらです。
その後、お揃いでキーケースも作りたいということでしたので、こちらも鷹工房のオリジナルキーケースの写真を見ていただいて打ち合わせをしました。
長財布同様、外側をグリーンで、内側にはこげ茶の革を使用し、リングはお客様が現在お使いになっているキーケースと同じタイプにすることになりました。
最終的に決定したデザインを、イメージしやすいように、色つきのイラストにして確認していただき、OKをいただいてから製作に入りました。
長財布とキーケースの完成
落ち着いた色合いで、ソフトな手触りの長財布と、お揃いのキーケースが完成しました。
カード入れは、中央の小銭入れの左側(写真では下方)にまとめるため、本体裏側と小銭入れにそれぞれ6枚、全部で12枚収納できるようにしました。小銭入れは、開閉が煩わしいのでファスナーを付けず、小銭がはみ出ない高さにしました。
右側(写真では上方)には、ポケットを1か所つけました。ポケット部分は、ロゴが刻印されていたバッグの内ポケットを利用し、お客様の思い出を残しました。内側をこげ茶の革で製作しましたが、このポケットのグリーンがアクセントになり、おしゃれな感じになっていると思います。
キーケースも、お財布と同じ色合いで、落ち着いた感じに仕上がりました。
お客様に完成写真を見ていただいてから、発送を致しました。
お手元に届いて見ていただくまで、気に入っていただけるだろうか、満足していただけだろうかと、ドキドキしていましたが、「想像以上の出来栄えで感動しました」というお言葉をいただき、安心すると同時に、喜んでいただけてよかったと、心から嬉しく思いました。
お客様のお喜びの声
今回のご依頼の感想をお願いしたところ、快くお引き受けいただき、このような丁寧なお手紙をご返送いただきました。
私たちにとって、この上ない嬉しいお言葉で、感動しました。
リメイクをご依頼されるお客様は、皆さんそれぞれに、その革製品に対する思い出や思い入れがあって、そこにハサミを入れ、形を変えることを、簡単に、軽い気持ちで決断されているわけではないと思うのです。
一度切ったら元には戻らないわけですから。
だからこそ、私たちも、しっかりとそのお気持ちを受け止めて、丁寧に、慎重に、不安を取り除けるような打ち合わせをして、お客様が「思い切ってリメイクしてよかった」と思っていただけるような仕事に、心して取り組んでいかなければならないと、改めて思いました。
リメイクをお考えの方、でも不安だなとお悩み中の方、一度鷹工房にご相談ください。その上でするかしないかを決めていただいたらよいかと思います。
鷹工房では、革製品だけでなく、ランドセルのリメイクも行っています。いろんな小物や、大人用のリュックなどにリメイクすることができますので、遠慮なくお問い合わせください。